「いいなぁ、男子は。トイレのことで困ることなんて、ほとんどないじゃん」
詩織は腕を組んで、少しふてくされたように言った。
「ほんとそれ! 私たちがもたもた並んでる間に、男子はサッと行って戻ってくるしね」
奈々がため息をつくと、美咲も深く頷いた。
「しかもさ、立ってできるってめちゃくちゃ便利じゃない? もう、生まれたときから勝ち組じゃん」
「なんかずるいよね! 私たちがあんなふうにできたら、どれだけ楽か……」
みんなが男子を羨ましがる中、詩織は複雑な表情で唇を噛んだ。
「……ねえ、ひょっとしてさ」
「ん?」
「私たちも、生まれたときは男子と同じものがついてたんじゃない?」
部屋が一瞬静かになった。
「……は?」
千尋が眉をひそめる。
「だから、生まれたときに、何かの拍子で切られちゃったとか」
「ちょっ、詩織、それ本気で言ってるの?」
美咲が呆れた顔をした。
「だってさ、なんでこんなに違うの!? こんなに便利な機能が、なんで私たちにはついてないの?」
詩織は本気で悔しそうに言った。
「ほら、生まれたばかりのときって、まだ体のつくりが完全じゃないとか、そういうのあるじゃん? だからさ、本当はちょっとした違いだったのに、途中で……」
「あるわけないでしょ!!」
奈々が大笑いしながらツッコんだ。
「詩織、さすがにそれはないって! 女の子には最初からついてないの!」
「えー……でも……」
「でも、じゃないから! そんなこと言ったら、男子も途中で私たちみたいになることあるってことになっちゃうよ?」
「……まぁ、それはないか」
詩織はしぶしぶ納得したものの、どこか腑に落ちない様子だった。
「でもやっぱり悔しいなぁ……なんで男子だけあんな便利な機能があるのよ……」
「そこはもう、仕方ないんだって」
美咲が肩をすくめた。
「……はぁ、来世は男子に生まれたい」
詩織は大の字になりながら、ふてくされたようにつぶやいた。
他の3人は苦笑しながらも、その気持ちはわからなくもない、というように頷いたのだった。

詩織の悔しさと疑問