悠斗は夜のベッドで、天井を見つめながら拳を握りしめた。
テストステロンの投与を続けることで、体つきはますます逞しくなり、声も低くなってきた。筋肉の張りも、体毛の増加も、すべてが「男らしさ」を象徴していた。だが、それと同時に強烈な欲望が生まれ始めていた。
性欲。
それは制御できない衝動だった。
かつての自分にはなかったほどの、猛烈な性衝動が身体を支配する。しかし、それをどうやって満たせばいいのか分からない。
手を伸ばしても、そこには何もない。
指で触れたところで、かつての感覚とは違う。それは明確な「欠損」の感覚だった。性的興奮はあるのに、それを発散する術がない。その矛盾に、悠斗は苛立ちを覚えた。
「これが、俺の現実なのか……?」
溢れる性欲を持て余しながらも、どうすることもできない。自慰を試みても、満たされることはなかった。快感のピークに達する直前で、何かが途絶えてしまうのだ。
まるで、男であることを許されていないような気がした。
外を歩いていても、女性の姿に強く惹かれる。肌の露出、香り、仕草——すべてが刺激となり、昂ぶる。しかし、いざ行動に移そうとしても、自分の身体がそれを阻害する。
「俺は男なのに……。」
悠斗は枕に顔を埋め、深く息を吐いた。
男としての欲望を持ちながら、それを満たせない。その現実が彼を苦しめ続ける。
この苦悩とどう向き合うのか——。
悠斗の旅は、まだ終わらない。

第四章:抑えきれない欲望