ブログ名:三橋順子先生ブログ
4月23日(月)
1956年に制定された「売春防止法」は、現在までの62年間、1度も改正されていない。
当然、その後の社会構造や人権思想の変化に対応することなく、現実離れした法律になっている。
そして、日本の買売春をめぐる諸問題の根源に、この時代遅れの法律がある。
最大の問題点は「売春防止法」がキリスト教的な倫理観に基づいて「(売春は)人としての尊厳を害し、性道徳に反し、社会の善良の風俗をみだすものである」(第1条)と、売春を悪行と決めつけていることである。
この規定がセックスワーカーの働く権利(労働権)を抑圧し、セックスワーカーへの不当な差別の根源になっている。
また、暗黙の前提として、売春の行為主体を女性、客を男性とする構造も完全に時代遅れで、同性間の買売春や性別変更が伴う売春行為が、まったく想定されていない。
私は大学の「セクシュアリティ論」の講義で次のように述べている。
① 売春を「人としての尊厳を害し、性道徳に反し、社会の善良の風俗をみだすものである」とする「基本認識」の再考が必要。
② セックスワーカーの人権(身体の自由・働く権利)と安全(暴力・性病・望まない妊娠の回避)を基本に据えるべき。
③ アメネスティ・インターナショナル(Amnesty International 国際人権NGO)が世界大会(2015年8月11日)で採択した決議「同意に基づくセックスワークの全面的な非犯罪化」を支持。④ セックスワーカーが搾取や人身売買、暴力に対して、他の職業と同じ法的保護を十分に受けることが重要。
こうした売春の「非犯罪化」に向けた国際潮流がある一方で、国内では2014年末~2015年に「全国婦人保護施設等連絡協議会(全婦連)」が厚生労働省、法務省、内閣府に「売春防止法」の改正を求める要望書を提出するなど、売春へ法的規制を強化する動きも根強い。
昨日渋谷・代官山「アマランス ラウンジ」で行われた映画「スカーレットロード」上映会の後のトークショー、ここらへんの問題(根源としての「売防法」)も整理して触れて欲しかった。
トークされたお二人(要友紀子さん、畑野とまと)さんは解っていても、会場の人の認識は、そこらへん十分でなかったように思うので。
「売春防止法」の問題点
「売春防止法」の問題点
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