県議会本会議の一般質問が四日あり、種部恭子議員(富山市第1)が体と心の性別が合わずに苦しむ性同一性障害(GID)の患者を巡る問題を質問した。当事者らは学校や投票所などで人権侵害を受けていると説明し、県の姿勢をただしたが、早急な対応策は示されず、種部議員が苦言を呈する場面もあった。(向川原悠吾)
産婦人科医の種部議員はこれまで、百人以上の患者の治療に関わってきた経験から「ほとんどが学校で制服が着られなかったり、トイレや着替えを苦痛に感じている」と問題を指摘。全県立高校のうち、制服の着用が強制されていないのは特別支援と定時制だけとして「制服や髪形で学ぶ機会が奪われることはあってはいけない。制服を選択制にするなど見直すべきだ」と求めた。
また、投票所の入場券に記されている男女別の表記についても疑問視。投票所の職員は入場券に書かれている性別を見て本人の確認をしているが、GIDの患者が訪れた場合に戸籍上と見た目の性別が一致せずに、執拗(しつよう)に確認されたり、陰口を言われることが横行しているという。「当事者には『選挙が地獄のような時間だった』と話している人がいる。男と女のたった一文字のために選挙に行けない人がいる」と訴え、性別欄の廃止を求めた。
学校での問題を巡る県側の答弁では、子どもたちの要望に配慮する対応を示していくとする答弁があったが、具体的な対策はなかった。入場券の男女別の表記に関しては石井隆一知事は「全国の先進的な取り組みを県としても検討したい」と言うにとどめた。
再質問に立った種部議員は「これでは当事者は次の知事選に行けるか大変疑問だ。投票したい人でも行かないと選択する人がいると思う」と不満を口にした。
県議会を傍聴した富山市在住で五十代の性同一性障害の当事者は戸籍上は女性だが、治療を受けており外見は男性と見られる。自らも投票所に行った際、入場券に書かれた性別と見た目の性別の違いが指摘され、十年間ほど投票しなかったことがあったといい「県の答弁はとにかく前例ばかりを見ていて、何も変えようとしないように見える。人権侵害の状況と当事者の話を聞いてほしい」と訴えていた。
種部議員は他にも、GIDについての説明を性教育で導入することや、県の関連資料で性別欄を廃止することを要望した。
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