性同一性障害のため戸籍上の性別を男性に変更して結婚し、第三者の精子提供で生まれた子との法的な父子関係を最高裁で勝ち取った兵庫県宍粟市在住の前田良さん(37)=活動名=が、初の著書「パパは女子高生だった」を出版した。性の違和感に苦しんだ過去、妻あきさん(37)=同=との出会い-。温かい家庭を築くまでの歩みを親子4人それぞれの目線で平易につづり、性や家族の多様性を認める社会の実現を訴えている。
前田さんは幼少期から女性の体であることに違和感を抱き、25歳で性別を変更。あきさんと結婚し、男児2人に恵まれた。子どもの戸籍の父親欄には当初、生殖能力がないことが明らかだとして前田さんの名前は記載されなかったが、最高裁が2013年に父子関係を認める初の判断を示し、同じ境遇に苦しんでいた全国の家族が救われる結果となった。
著書の1、4章は、それぞれ長男(9)と次男(7)が話す形で、前田さんの幼少期から結婚・出産までの歩みと、家族の近況を紹介。第2章は前田さん自身の目線で、出生届の父親欄の名前を消すよう求められた日から、最高裁で逆転勝訴をつかむまでの闘いを描いた。
第3章では、これまで講演や執筆活動を行っていなかった妻のあきさんが、前田さんとの出会いや結婚を決心するまでの心境、裁判や報道で注目を浴びた苦悩などを初めてつづった。
性同一性障害の告白とともに交際を申し込まれた時の困惑や、一緒に時間を過ごして人柄をどんどん好きになったこと、母になった喜び、周囲の目線が気になったことなどを記し、「家族にはいろんな形があって当然。苦労も迷惑もかけられるけど、夫婦ってそんなもの」と自然体で受け止めている。
前田さんは「性の多様性について偏見が残った社会に子どもたちを送り出すことはできない。この本で、子どもも自分たちも生きやすい世の中になってほしい」と話した。
Copyright © 2019 女装トランスジェンダーニュース-JSN24- All Rights Reserved.