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私は、恋愛感情を抱くのは同性なので、自分をゲイだと思っています。
でも、同性に対して、さほど性的な興奮を感じるわけではありません。
むしろ、性的な興奮といった意味では、ヘテロセクシュアルだと思うんですよね。
こういう場合、どのように性的指向を表せばいいのでしょうか。
その手がかりとして、KSOG(クライン性的指向グリッド)に示された7つの要素を紹介します。
キンゼイスケールとKSOG
KSOGとは、Klein Sexual Orientation Gridのことで、クライン性的指向グリッドと訳せるでしょう。フリッツ・クラインという人が、キンゼイスケールをもとに考案したもので、「The Bisexual Option」という著作に載っています。
キンゼイスケールとは、キンゼイという人が作ったスケールです。0を完全な異性愛者とし、6を完全な同性愛者とします。1は主に異性愛者だが、たまたま同性に惹かれることもある……、というように、異性愛から同性愛まで、連続的に7段階に分けたものです。
このやり方だと、「恋愛感情を抱くのは6だけど、マスターベーション時の想像は2ぐらいで、実際に性行為をするのは0だ」という人は、結局何番を選んだらいいのかわかりませんよね。
KSOGは、7つの要素をこれに加えることで、この問題を解決しています。
7つの要素
クラインが提示した7つの要素は以下の通りです。それぞれの要素について、過去・現在・理想の3つの場合を答えます。要素の名称の日本語訳は、牧村朝子さんのもの(牧村 p133)がわかりやすいので、それを使用しました。
A 性的魅力(Sexual Attraction)
どの性別の人に性的な魅力を感じるかということ。
B 性的行動(Sexual Behavior)
実際にどの性別の人と性行為をするか、してきたかということ。性的魅力を感じなくても性行為はできるので、Aとは分けて考える必要があります。FTMの異性愛の人が、試しに男性と性行為をしてみたというのは、たまに聞く話ですね。
C 性的空想(Sexual Fantasies)
マスターベーション時に、どの性別の人について想像をするかということ。やはり、これも実際の性行為とは別です。
D 感情的嗜好(Emotionai Preference)
感情的・情緒的にどの性別の人に惹かれ、愛情、親密な感情を持つかということ。
E 社会的嗜好(Social Preference)
社会的に、どの性別の人たちと一緒に過ごしているか、過ごしたいか、ということ。交友関係といえるものです。
F 生活的嗜好(Heterosexual↔Homosexual Lifestyle)
同性愛的コミュニティ、異性愛的コミュニティのどちらで過ごすかということ。ゲイバーやクラブ、ゲイ・レズビアンのグループなどに行くかどうか。また、過ごしやすいのはどこか。
G 自己認識(Self-Identification)
自分自身をどのように認識するかということ。同性愛者か、異性愛者か、バイセクシュアルか、アセクシュアルか……というように。
重要なポイント
クラインはこう書いています。
KSOGは、性志向に関するほかのいくつかの側面をカバーし切れないという限界も確かにある。[引用者注:「性志向」と訳されているのは原文ではsexual orientationなので、性的指向のこと。]( クライン 河野訳 p132)
そして、カバーしきれない他の側面として、パートナーの年齢や、愛情と友情の区別、性的魅力についての肉欲と愛着の区別、性別役割などを挙げています。
つまり、性的指向のすべての側面が7つの要素で表せるわけではないし、挙げようと思えば、もっといくらでも要素はあるということです。
だから、「ヘテロセクシュアル」、「ゲイ」、「レズビアン」、「バイセクシュアル」、「アセクシュアル」等々と言っても、一人一人その中身は、実は大きく違う可能性があります。
マンガに出てくるような軸では、ありのままの自分は表しきれないといえます。
おわりに
私は自分をゲイだと思いつつ、「本当にゲイと言えるのか?」と悩んでしまったことがあります。
というのも、冒頭で書いたように、間違いなく男性に恋愛感情は抱くものの、男性への性的な欲望というものは、あまり無いからです。ゲイ向けAVなどには全く興味がないし、むしろヘテロセクシュアルのAVの方が良いです。でも女性に恋愛感情はほぼ持たないので、バイセクシュアルとも言い難い……。
そんな自分の性的指向は、いったい何なんだろうと、わからなくなっていました。今考えると、やはり冒頭のイラストのように、性的指向を一本の軸で考えていたのだと思います。
今回はクラインの7つの要素を示しました。私の中には、この7つの要素でも表しきれない性的指向の部分があると感じています。
「性的指向」といった言葉、マンガのような3要素の軸は、自分や他者を理解するために利用する、一つのツールです。その枠に自分を閉じ込めて悩む必要はないし、ましてや他人を縛るためのものであってはならないと思います。
参考文献
Fritz Klein, MD 1993 “The Bisexual Option (Second Edition)” American Institute of Bisexuality, Inc.
フリッツ・クライン 河野貴代美訳 1997『バイセクシュアルという生き方』現代書館 (“The Bisexual Option”の日本語訳版)
牧村朝子 2016 『同性愛は「病気」なの?』星海社新書
Wikipedia Klein Sexual Orientation Grid , Kinsey scale
【マンガ】性的指向は7つある?クライン性的指向グリッド
【マンガ】性的指向は7つある?クライン性的指向グリッド
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