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性分化疾患の方が、手術せずに戸籍の性別を変えたことがニュースになりました。
子宮・卵巣を摘出しておらず、妊娠・出産の可能性があるけれど、戸籍は男性になったということです。
このニュースについて考えてみましょう。
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DSDとGID
このニュースの書き方は、たいへん誤解を招きやすいものなので、まず前提を確認しておきましょう。
最も重要なことは、このニュースで取り上げられている事例は、DSD(性分化疾患)の人のことであり、GIDの人についてではありません。
GIDの人が性別変更を行う場合の法律は、おなじみのGID特例法ですね。しかし、今回のケースは「戸籍の記載の誤りは訂正できると定めた戸籍法」、すなわち戸籍法113条です。
性別変更と生殖
この出来事がなぜGIDと結びつけられて語られてしまったのでしょうか。
問題は「子宮や卵巣を摘出する手術を受けるのが難しく、戸籍上男性となっても妊娠・出産できる可能性は残している」点でしょう。
GID特例法では、生殖機能を無くすことが、性別変更の条件となっています。そのためには、手術が必要になりますよね。もちろん体に負担がかかるし、保険がきかないため費用も相当なものです。
でも、手術無しでの性別変更OK、ということになると、男性が子どもを産むといった事態になってしまいます。子が生まれることによる混乱や問題の存在が、特例法がSRSを求める理由になっているようです。
しかし、妊娠・出産できるDSDの人が、戸籍上男性になれるのなら……。「子が生まれることによる混乱や問題」はどうなったの?という話になるわけです。それならGIDの場合でも問題はないだろうと。そういうことだと考えられます。
性別判断の比重が「体」から「心」になった?
さて、記事中で針間克己・はりまメンタルクリニック院長が「性別を判断する比重を『体』から『心』へと移した決定で画期的」と述べたとされています。
しかし、この事例だけで、「性別を判断する比重を『体』から『心』へと移した」と言い切るのは難しいでしょう。なぜなら今回の例は、二人とも「体は女性だが自分を男性と認識」している人だからです。
これ、「体は男性だが自分を女性だと認識」している人だったら、どうだったのでしょうか。そして生殖機能があったなら。手術なしで性別変更OK、となったでしょうか。女子トイレも女湯もOK、となったでしょうか。
それだったら、「性別を判断する比重を『体』から『心』へと移した」と言える余地もあるかもしれません。
しかし、性別判断を「心」重視、とするのは、まだまだ難しい現状があると思います。少なくとも、女子トイレ・女湯問題について、何らかの説得力のある意見が必要でしょう。
おわりに
この問題は、今ニュースになっていますが、2017年3月のGID学会で、大島義孝先生が「戸籍の性別の「変更」ではなく「訂正」が認められた 21-水酸化酵素欠損症の2症例 」として発表されているようです。
私はもうずっとGID学会には行けていませんが、やはり重要なテーマが多そうですね。次回は行けたらいいなと思います。
手術せず性別「変更」!?心の性は重視されているのか
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