サッカーの練習が終わると、男子たちはいつものようにグラウンド脇の草むらに集まり、立ちションを始めた。
「やっぱ外でやるのが一番ラクだよな!」
「トイレ行くのめんどくせぇしな!」
男子たちは得意げに言いながら、思い思いの方向に向かって放尿する。
詩織は、そんな彼らを遠くから睨みつけた。
(……ズルい!)
詩織がトイレに行きたいときは、遠くの体育館のトイレまで行かないといけない。
練習の合間にトイレへ行くと、戻ってくるころにはもう練習が再開されていたりする。
その間、男子たちはほんの数秒で済ませて、すぐにグラウンドに戻れる。
それが悔しかった。
詩織が何よりも嫌いなのは、「女だからできない」と思われること。
だから、男子たちがふざけて「詩織もここでやれば?」と笑ったとき、つい反発してしまった。
「……女だって、外でおしっこぐらいできるから!」
そう言い放ったものの——
(……いや、でもどうやって?)
立ちションはできない。
だけど、ここで引き下がるのも悔しい。
「……じゃあ、見てなさいよ!」
そう言って、詩織は草むらの奥へと歩いていった。
男子たちは半信半疑で見送る。
(……座れば、できるはず)
そう思いながら、詩織はしゃがみこんだ。
「……ふん、これでいいでしょ」
そう呟きながら、草の上に放尿した。
音が響く。
男子たちは、遠くからクスクスと笑っていた。
(これで、私だって男たちに負けてない!)
そう思いながら、堂々と立ち上がり、何事もなかったかのようにグラウンドへ戻った。
——しかし、その話はすぐに広まり、母親の耳に入った。
その夜、家に帰ると、母親に真剣な顔で叱られた。
「詩織、あなた、外でそんなことをしたの?」
「……だって、男たちがズルいんだもん!」
「女の子が、そんなことをしてはいけません!」
母の厳しい声に、詩織はふてくされたように口を尖らせた。
(なんで女の子はダメなの? 男の子ならいいのに?)
納得がいかなかった。
でも、それ以来、詩織はもう草むらでおしっこをしなくなった。
——だけど、心の奥ではずっと「男はズルい」と思い続けていた。
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詩織の野外座りション