ホテルで悠斗と別れた後、詩織はタクシーの後部座席で窓の外をぼんやりと眺めていた。
都会のネオンが車窓に映り込む。
彼女の頭の中には、昨夜の出来事が渦巻いていた。
(……悠斗くん、面白い男だったな)
詩織は、クスッと笑う。
——男なのに、男の象徴がない。
それは、彼女にとってあまりにも新鮮な存在だった。
子供の頃、詩織は何度も男という性に悔しい思いをさせられてきた。
立ちションができないこと。
おちんちんがないこと。
男子たちにからかわれるたびに、「どうして私は男じゃないんだろう」 と何度も思った。
大人になって、男を弄ぶ術を覚えた。
美しさ、知性、駆け引き——それらを駆使すれば、男を手玉に取ることもできる。
けれど——
それでも、男には決定的に勝てない瞬間がある。
腕力。
そして、陰茎。
性行為は、結局、男が女にマウンティングするもの だった。
自分が上に乗ることもできる。主導権を握ることもできる。
けれど、最終的にすべてを支配するのは、彼らが持つ “アレ” だった。
——それがない男がいる。
悠斗の顔が思い浮かぶ。
彼には、陰茎がない。
男でありながら、男の最大の武器を持たない。
(……もしかして、最高のパートナーなんじゃない?)
詩織の胸に、ざわりとした感情が広がる。
悠斗は、普通の男のようにマウントを取ってこない。
それどころか、詩織が上に立つことさえできる。
しかも、彼は「男として生きたい」と思っている。
男としてのプライドがある。
だからこそ——
弄ぶのが、楽しい。
詩織は、少しだけ唇の端を持ち上げた。
(悠斗くん……また、会おうかな)
タクシーは、目的地に到着しようとしていた。
詩織の中で、悠斗への興味が、静かに、しかし確実に深まっていくのを感じていた。
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詩織の考え