朝日がカーテン越しに部屋をぼんやりと照らしていた。
悠斗は、目覚めのぼんやりとした意識の中で天井を見つめる。体の疲労感が全身を包み込むが、それ以上に、自分の股間に違和感を覚えた。
(……朝勃ちがない)
当然のことだった。
悠斗には、もうそれを起こす機能は残されていない。
かつてなら、目が覚めたときには自然と張り詰めた感覚があったはずだ。しかし、今は何もない。ただの平らな肌と、女性のような感触がそこにあるだけ。
「……おはよ」
隣で詩織が身じろぎしながら、眠たそうな声で呟いた。
「……ああ、おはよう」
悠斗は短く返事をする。
詩織はベッドの中でごそごそと動き、ふと興味深げに言った。
「ねえ、朝勃ちチェックしよっか」
「……いや、それは……」
悠斗が言葉を濁す間に、詩織の手が悠斗の股間にスルリと伸びた。
——そして、触れた瞬間、詩織の動きが止まった。
「……あれ?」
彼女は、不思議そうに指を動かしながら、何かを確かめるように触れる。
しかし、そこには期待していたものはない。
詩織の指先が柔らかな肌に触れ、ふと彼女の表情が微妙に変わった。
「……なんか、思ってたのと違う」
「……だから言ったろ」
悠斗は視線を逸らす。
詩織は一瞬、気まずそうな沈黙を挟んだ後、軽く笑った。
「ごめん、なんか……女の人を触ったみたいな感覚だった」
彼女の言葉に、悠斗の心臓がズキリと痛む。
(……そうだよ。俺の股間は、もう女のそれにしか見えないんだ)
詩織は少し考える素振りを見せた後、突然、いたずらっぽい笑顔を浮かべた。
「じゃあさ、私のも触ってみる?」
「は?」
「ほら、私も朝勃ちないし。フェアでしょ?」
そう言いながら、詩織は悠斗の手を取ると、自分の股間へと導いた。
悠斗の指先が、彼女の肌に触れる。
そこには、悠斗の股間と似た——いや、ほとんど同じ感触があった。
「……ね? 一緒でしょ?」
詩織はクスクスと笑いながら言う。
しかし、悠斗の心は冷えていく。
(俺は……もう、本当に“女”と同じになってしまったのか?)
詩織は軽いノリで言っているつもりだったかもしれない。
だが、悠斗にとって、それは決定的な現実の再確認だった。
(俺は……本当に、男なのか?)
何も言えず、ただ呆然と手を引っ込める悠斗の横で、詩織はいつもと変わらない様子で微笑んでいた。
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朝の確認