悠斗の言葉が部屋に沈黙を落とした。
詩織は目を瞬かせながら、悠斗の顔をじっと見つめる。
「……ニューハーフだったってことはさ」
彼女は少しずつ言葉を選ぶように口を開いた。
「自分の意志で、男性器を取って……女の子みたいにしたってこと?」
悠斗は小さく息を吸う。
「……ああ」
詩織は、ベッドの端に腰掛け、軽く脚を組む。
「もったいなすぎるよ」
それは、率直な感想だった。
悠斗は予想していたはずなのに、その言葉に胸が少し締め付けられる。
「だって、立ちションはできなくなるし」
詩織は少し首をかしげながら、続ける。
「私、さっき見たけど……もう、完全に女子の形だったよ」
悠斗は答えなかった。
「それに、もしそうなら……私と交わることも、もうできないんだよ?」
詩織はわざと悠斗の目をじっと見据えた。
挑発するような、試すような目だった。
「男なのに、女みたいな形になってる……悠斗くんって、どういう気持ちなの?」
悠斗はすぐに答えられなかった。
男として生き直すと決めた。
けれど、その“男”の象徴は、もうどこにもない。
それを認めるのが、何よりも悔しかった。
「私ね」
詩織は、ふっと笑いながら続ける。
「ニューハーフの人を見ると、いつも思うことがあるんだよね」
「……何を?」
「切るなら、私にちょうだい」
悠斗の心臓が跳ねた。
「だって、さっきも言ったけど、男って便利そうじゃん?」
「……」
「なのに、自分からそれを捨てるなんて、もったいなさすぎる」
詩織はため息をつくように言った。
「私がもしも、悠斗の立場だったら……たぶん、絶対に手放さなかったと思う」
悠斗は、拳を握りしめた。
それは、誰かに言われることを一番恐れていた言葉だった。
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詩織の本音