「でもさぁ、男子のってさ、ほんとに人それぞれ違うのかな?」
詩織が布団に寝転びながら呟くと、千尋が興味津々な顔で身を乗り出した。
「え、どういうこと?」
「いや、さっきの男風呂の話じゃないけどさ、クラスの男子ってみんな同じに見えるじゃん?」
「うんうん」
「でも、実際は違うわけでしょ?」
「そりゃあ、違うんじゃない?」
奈々が小さく頷く。
「いやぁ~、見てみたいなぁ~!」
詩織が冗談めかして言うと、千尋が吹き出した。
「ちょっ、詩織、直接言うのやめなよ!」
「だってさぁ、気にならない? 自分の好きな人のとか、どんな感じなんだろうって!」
「ちょっとちょっと、具体的な名前出すのは禁止ね!」
美咲が慌てて制止するが、奈々はもうノリノリだった。
「いやいや、でもさぁ、例えばだけど……○○くんとか、絶対大きそうじゃない?」
「あー、わかる!!」
千尋が即答する。
「だって、手がでかいもん! そういうのって関係あるんでしょ?」
「え、それマジ?」
「なんか聞いたことある! 手とか足が大きいと、それも比例してるとか!」
「うわぁ~、じゃあ○○くん、やばいんじゃない?」
「ねぇねぇ、逆にさ、△△くんはどう思う?」
「え~……あんまり大きいイメージないなぁ」
「うん、なんか優しい感じするし、細そう……」
「細いって何!?」
「いや、なんとなく!」
「じゃあさ、◇◇くんは?」
「あー、あの人はなんか、しっかりしてそう!」
「めっちゃ固そう!」
「いや、固いとか柔らかいとか、知らんし!!」
「でもさ、男子ってすごい気にするんでしょ? サイズとか!」
「うん、だからこそ風呂場で話してたんじゃない?」
「なんかさ、もっと適当に考えればいいのにね」
「でもさ、もし付き合った人がめちゃくちゃ小さかったらどうする?」
詩織がいたずらっぽく言うと、奈々がちょっと困ったような顔をした。
「え……それは……」
「やっぱ、気にする?」
「いや、うーん……でも好きだったら、そこまで気にならない……かな?」
「ほんとに~?」
「いや、正直めっちゃ小さかったら、ちょっと考えちゃうかも……」
「うわー、最低!」
「だって、仕方なくない?」
「確かに……」
千尋も複雑そうな顔をする。
「でもさ、逆にめっちゃ大きすぎても困るんじゃない?」
「それもあるよね!」
「バランスが大事って話か!」
「そうそう、結局そこなのよ!」
美咲が満足げに頷く。
「いやぁ~、でもやっぱり、好きな男子のって気になるよね~」
詩織がぼんやりと天井を見上げる。
「誰か、実際に見たことある人いないの?」
「いや、さすがにないでしょ!」
「でもさぁ……見てみたくない?」
「それは……」
女子たちはしばらく沈黙したあと——
「まぁ、ちょっとはね」
「うん、ちょっとは」
「気にならないって言ったら、嘘になるかも」
結局、誰も完全には否定しなかった。
こうして、修学旅行の夜は、ますます尽きることのない話題で盛り上がっていくのだった。
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好きな男子の話