修学旅行の夜。夕食を終えた詩織たちは、大浴場へと向かっていた。旅館の浴場は広く、湯気が立ち込め、肌をなでる蒸気が心地よかった。
「ふぅ~、やっぱり大きいお風呂って気持ちいいね!」
奈々が湯船に肩まで浸かり、満足そうに息を吐く。
「だね~、やっぱり家のお風呂とは全然違うよね」
美咲も頷きながら、湯の中で足を伸ばす。
そんな中、詩織は少し落ち着かない様子だった。
(今なら……確認できる)
さっき部屋で話していた「私たちも生まれたときには何かついてたんじゃないか」という自分の発言。冗談半分で言ったつもりだったが、内心では本当にそうだったらどうしようと、妙に気になってしまっていた。
「ねえ、詩織、何ぼーっとしてんの?」
千尋が不思議そうに覗き込む。
「あ、いや、なんでもないよ!」
慌ててごまかしながら、詩織は周囲をちらりと見渡した。女子たちはみんな、当たり前のように湯に浸かっている。
(……みんな、どうなってるんだろう)
ふと、近くにいた奈々が湯船から立ち上がった。その瞬間、詩織はつい視線を向けてしまった。
——やっぱり、何もついてない。
つるんとした肌に、すらりと伸びた足。股間には当然ながら、男子のようなものはどこにもない。
(……そりゃそうか)
当たり前のことなのに、なぜか妙に納得しながらも、ほんの少しだけ寂しさを覚えた。
だが、その中で一人、ずっとタオルを外さないまま入っている千尋の姿が目に入った。
「ねえ、千尋」
「ん?」
「なんでずっとタオル巻いてるの?」
「えっ?」
千尋は一瞬戸惑ったような顔をした。
「いや……別に、癖みたいなもんかな」
「でも、女同士じゃん? 何を隠してるの?」
詩織が首をかしげながら尋ねると、美咲がクスクスと笑った。
「確かに! ここに男の人なんていないのにね~」
「う、うるさいなぁ……別に深い意味はないし!」
千尋は頬を膨らませながら、渋々タオルを外した。
——やはり、何もついていない。
当然のことなのに、詩織はなぜか再確認したような気分になった。
(……やっぱり、ついてないんだよね)
当たり前のことを納得しながらも、どこかもどかしさを感じる。
「ほら、これで満足?」
千尋は少し恥ずかしそうにしながらも、開き直ったように肩をすくめる。
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修学旅行の女風呂