コーヒーを飲んだ後トイレに行くと、さっきの女子高生の一人が並んでいた。
カフェの奥にあるトイレへ向かうと、すでに列ができていた。並んでいたのは、先ほど会話をしていた女子高生の一人だった。
トイレには男女共用の個室便器と、男性用の小便器が一つ。
小便器は、女子高生はもちろん、悠斗も使えない。
悠斗は女子高生の後ろに並ぶ。
しかし、その瞬間、女子高生が一瞬だけ彼の方を見て、わずかに顔をしかめた。
「……」
違うんだ。俺だって、本当は立ちションがしたい。
でも、もうできないんだ。
悠斗は唇を噛みながら、女子高生の後ろに並び続けた。
彼女にとっては、男性用の小便器があろうとなかろうと関係ない。
悠斗も陰茎が無いという意味では同じだった。
男女共用の個室トイレが開くのを待つしかない。
その間、頭の中にはさっきの女子たちの会話がよぎる。
「男子ってトイレ楽でいいよね!」
「立ちションできるの超うらやましい!」
悠斗は拳を握りしめた。
しばらくして、個室から20代の女性が出てきた。
女子高生が入る。
ドアが閉まり、ほどなくしてトイレットペーパーをガラガラと回す音が聞こえた。
悠斗は立ち尽くすしかなかった。
(……俺も、この列に並ぶしかないんだよな。)
数分後、女子高生が出てきた。
彼女は悠斗に目を合わせることなく、気まずそうに駆け足でトイレを後にした。
悠斗は何とも言えない気持ちで個室へと足を踏み入れた。
便座は下がったまま。女子が使った後を象徴している。
手を伸ばして便座を上げようとしたが、その手は途中で止まった。
(……無意味だよな。)
男なら、便座を上げる。
でも、悠斗には、その必要がない。
女子高生が終わった後に、悠斗は同じように座りションするのだった。
まだ生暖かさが残るその便座。
(俺は……彼女たちと同じなんだ。)
カフェの男女共用トイレ