銭湯の暖簾をくぐると、湯気が立ちこめる男湯の空間が広がっていた。
悠斗は緊張した面持ちで、周囲を確認しながら脱衣所へと向かった。
(大丈夫だ、誰も俺のことなんて気にしてない……はず。)
そう自分に言い聞かせながら、服を脱いでタオルを腰に巻く。しかし、股間の膨らみがないせいか、タオルの収まりが妙に不自然だった。
(深く考えずに、さっと湯に入ろう。)
しかし——。
ふと視線を感じた。
最初は気のせいかと思ったが、確かに誰かの視線が自分の体をじっくりと観察している。
悠斗はそっと視線を上げると、向かい側の男が不審そうな目でこちらを見ていた。
久しぶりに見る生身の男性の陰茎に圧倒される。さまざまな形があるとはいえ、どれも明確な男性の証としてそこに存在している。しかし、悠斗の股間にはそれがなく、代わりにあるのは女子と同じ形の割れ目だった。
(俺だけが違う……)
焦りながらタオルを巻き直そうとしたその瞬間、手が滑り、一瞬だけタオルがめくれた。
「……っ!」
悠斗は素早く押さえたが、すでに遅かった。
すぐそばにいた男が、一瞬目を見開く。
「……あれ?」
ただの偶然かもしれない。だが、その視線は明らかに困惑していた。
悠斗は全身が強張るのを感じながら、湯船へと向かおうとした。
だが、その焦りが裏目に出た。
足元が滑りそうになり、とっさにバランスを取ろうとした瞬間、巻いていたタオルがするりと落ちた。
「……っ!」
とっさに足を閉じ、両手で股間を隠そうとする。しかし、その一瞬の隙に、周囲の視線が悠斗の股間に注がれる。
外観からは完全に女性のような無毛の割れ目。
「……え?」
最初に気づいた男が、驚いたような声を漏らす。
そして、次第に周囲の男たちの視線が集まり始めた。
「なにあれ……?」
「おい、マジかよ……。」
ざわめきが広がる。
悠斗は咄嗟にしゃがみ込んでタオルを拾い、震える手で身体を覆った。しかし、その動揺は隠しきれない。
(終わった……)
視線が痛いほど突き刺さる。彼らの表情には、好奇と混乱、そして得体の知れない違和感が入り混じっていた。
悠斗は何も言えず、ただ脱衣所へ逃げるように向かった。だが、もう遅い。すでに、男たちの視線が背後から突き刺さっていた。
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男湯で割れ目をみられる