悠斗は、医療機関のカタログをめくっていた。
「陰茎再建手術を受ける患者のための人工陰茎」
そんな文字が目に飛び込んできた。悠斗は迷いながらも、手術で作られる人工陰茎の見学へと足を運んだ。
白い蛍光灯の下、ガラスケースの中に陳列された人工陰茎。最新の技術で作られたものだと説明を受けたが、悠斗の目には、どれも安っぽい偽物のように映った。
「これが……俺の選択肢?」
形状は人間の陰茎に似せて作られているものの、無機質な質感と、どこか頼りない見た目に、悠斗は言葉を失った。まるで、安物のソーセージのようだった。
これを自分の体に取り付けたところで、本当に「男としての自分」を取り戻せるのだろうか?
「……これで満足できるとは思えない。」
呟いた声は、誰にも届かず、ただ空間に溶けていった。
悠斗は溜息をつき、カタログを閉じた。
彼に付いていた本物のペニスは、亀頭が大きく、エラが張っていた。確かにそこに存在し、反応し、快感をもたらしていた。
だが、今目の前にある人工陰茎はどうだ?
亀頭の膨らみもなく、まるで包茎のまま固まったような形状。しかも、立ちションこそかろうじてできるものの、常に半立ちのような中途半端な硬さで、勃起といえるものではない。性感帯もなければ、射精もできない。
「こんなものをぶら下げても、コンプレックスが増すだけだろう……。」
悠斗は静かに呟いた。
もし、これを取り付けたとして、それは“男としての象徴”になりうるのか?
自分の身体の一部として受け入れられるのか?
答えは出ない。
悠斗は立ち上がり、重たい足取りで部屋を後にした。
このまま受け入れるのか、人工陰茎という手段を選ぶのか——。
まだ、その答えは見えなかった。
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人工陰茎という選択