悠斗は、ベッドの上で目を閉じた。
明日は夏希とのデート。いつかこの関係が深まれば、肌を重ねる日が来るかもしれない。
そう考えながら、彼は何度も頭の中でその場面をシミュレーションしてみる。彼女の肌の温もり、絡み合う指、重なる唇——そこまでは鮮明にイメージできる。
だが、その先が続かない。
彼が夏希を抱こうとする。しかし、次の瞬間、想像の中の自分は動けなくなる。
「……俺は、一体どうすればいいんだ?」
挿入するはずの場面が、どうしても想像できない。
彼の股間には、何もない。
その事実が、幻想を現実に引き戻す。
それでも、と無理やり想像を続けようとすると、自分のなにもない股間を夏希に押しつける場面が浮かんでしまった。
「……これじゃ、まるで……」
彼は目を開け、天井を見つめた。
男として、彼女を抱くべきなのに、その行為の核心が抜け落ちている。彼がどう振る舞おうと、どう努力しようと、そこには決定的に欠けているものがある。
「俺は……彼女を満たせるのか?」
思考が堂々巡りを始める。
性別適合手術を受けたとき、こんな葛藤を抱えることになるとは思わなかった。男として生きることを選んだのに、男としての役割を果たせないかもしれないという不安が、彼を蝕んでいく。
枕に顔を埋める。
「……考えたって、仕方ない。」
悠斗は、自分に言い聞かせるように深く息を吐いた。
だが、その夜、彼はなかなか眠れなかった。
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女装拡散ゾウさん
掲載媒体:性転換大失敗!元ナシナシニューハーフが男に戻る!
第10章:想像できない行為
第10章:想像できない行為