悠斗は、シャワーを浴びた後の熱気が残る洗面所で、自分の姿を鏡に映していた。
トレーニングの成果が出始め、胸板は厚くなり、腕の筋肉は浮き上がるほどになっていた。肩幅も広くなり、逞しい男の体つきに近づいてきた。
「いい感じだ……」
悠斗は思わず小さく笑った。男らしい体を手に入れたことが誇らしかった。
しかし、その喜びも束の間だった。
ふと目を下に落とした瞬間、心が凍りつく。
股間には、何もない。
見慣れたはずのその光景が、今さらのように自分に突きつけられる。
「……違う、こんなはずじゃない。」
どれだけ鍛えても、どれだけホルモンを摂取しても、ここだけは元には戻らない。
胸の筋肉は膨らみ、腕の力は増しているのに、下半身だけが空白のように感じる。鏡に映る自分の姿は「男」になりつつあるはずなのに、股間を見た途端、それがすべて嘘のように思えてしまう。
「俺は……本当に男なのか?」
手を伸ばして、自分の下腹部をなぞる。そこには、あるはずのものがない。かつての自分は、確かにそこにいたのに。
悠斗は鏡の前に立ったまま、拳を握りしめた。
どれだけ自分を鍛えても、どれだけ努力しても、この欠落は埋めることができない。
「もう戻れない……。」
心の奥底にあった後悔が、じわじわと浮かび上がってくる。
鏡の中の自分が、どこか別人のように見えた。
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女装拡散ゾウさん
掲載媒体:性転換大失敗!元ナシナシニューハーフが男に戻る!
第六章:鏡の中の自分
第六章:鏡の中の自分