悠斗は、男風呂の入り口で足を止めた。
浴場から聞こえる湯の音と、男たちの笑い声が彼の耳に突き刺さる。彼は自分の中に根付いた違和感と戦いながら、深呼吸をした。
「大丈夫、俺は男だ……。」
意を決して更衣室の扉を開け、服を脱ぐ。鏡に映った自分の身体は、上半身は筋肉がつき、男らしくなってきた。しかし、下半身に目を落とした瞬間、心が一気に沈む。
何もない。
かつてそこにあったものが、今はない。男たちが無造作に裸で歩き回る空間に、自分の身体がそこに馴染まないことを痛感する。
浴場へと歩を進めると、周囲の視線が気になった。誰も彼を特別視しているわけではないはずなのに、自分だけが異質な存在のように感じられる。
「見られている……?」
そう思うと、心臓が強く打ち始めた。だが、それは自意識過剰かもしれない。彼はできるだけ堂々とした態度で湯船に向かった。
湯に浸かりながら、周囲の男たちが雑談をしている。何気ない会話が耳に入るたびに、彼はますます自分が場違いな存在のように思えた。
「なあ、あいつ、なんか変じゃね?」
ふと、小さな笑い声が聞こえた。
「なあ、アイツ、何か隠してねぇ? つるんとしてるっていうか……」
別の男の声が続く。悠斗は体をこわばらせた。
「なんかしたのか? それとも事故とか?」
無邪気なようでいて、鋭い言葉が刺さる。笑いが含まれたその声に、悠斗の顔が熱くなった。
「そんなことねーだろ。まさか……女だったとか?」
その言葉に、何人かが吹き出した。
悠斗は、湯に沈めた手を握りしめた。
「俺は……男なのに。」
湯に溶けることなく、その言葉は彼の胸の奥でずっと渦巻いていた。
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女装拡散ゾウさん
掲載媒体:性転換大失敗!元ナシナシニューハーフが男に戻る!
第五章:男風呂の中での葛藤
第五章:男風呂の中での葛藤